マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第17冊目
腸は考える 藤田恒夫著 岩波新書 1991
このコロナ禍長引いて、みなさん体調はいかがですか? おなか壊したりしていませんか? 腸は考える。脳は腸から始まったのだそうです。腸は小さな脳なのです。
そもそもこの本を手に取ったのは、目次の中に、酒は胃を強健にするという項目があったからです。酒は百薬の長という一方で、やっぱりお酒は良くないらしいとも世間で聞くので、やはり味方の意見を集めておくことは大事です。
しかしそれが本の主な内容ではありません。腸は非常に困難な課題に独自の知恵で取り組んで、実にみごとにそれを処理しているということを書いています。むずかしい研究というより人と人の出会い、出会った人の個性や発想、夢や失意などを盛り込んで、分かりやすく楽しく読める本にしています。
私たち哺乳類の先祖をずっとずっと辿っていくと、もっとも原始的な動物であるイソギンチャクとかヒドラに行き着きます。このヒドラに脳はありませんが、腸のまわりに神経系のニューロンが散らばっていて、それがだんだん密集して上に追加されていって一番上にできたのが、脳だというわけです。だから腸は脳なんですね。
ところでこのヒドラらの腔腸動物から、5億年前に動物は二つの幹に分かれて進化してきました。一つの幹の最先端にわたしたちとその仲間たちの哺乳類がいるわけですが、もう一つの幹の最先端にいるのが昆虫たちです。つまりゴキブリたちなんですね。わたしたちは5億年前に元同じものから道を分かれました。だからこの先合流することは決してありませんが、わたしたちのからだの奥には元同じだったものが認められます。腸を顕微鏡でのぞいていくと、ヒドラ時代とたいして変わらない、原始の腸の星形のニューロンを確認することができるそうです。
ゴキブリもあの頭の内側に小さな脳を持っているんですね。ときに台所で顔を合わせることがありますが、やっぱりやっこさん考えて逃げているんですね。わたしたちの脳は大きくなりましたが、さて、この先どっちが生き残って行くのでしょうか。
田崎 敬子
腸は考える (岩波新書 新赤版191 新赤版 191) [ 藤田 恒夫 ] 価格:902円 |
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