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日本人の坐り方 矢田部英正著 集英社新書 2011 はじめ文庫の本棚から

マイクロライブラリー はじめ文庫

マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第19冊目

日本人の坐り方 矢田部英正著 集英社新書 2011

 

今、正しい坐り方というと正座のことです。正座だけが、お行儀の良い、しつけられた、礼儀のある坐り方とされています。ですが今の暮らしの中で正座を習慣にしている人はどのくらいいるでしょう。近頃は正座を知らない子どもたちもいます。体育座りを正座だと思っていたりしますよ。私にしても、長い時間正座をする機会は年に1、2回ですし、この時の足のしびれ方は尋常ではありません。

正座が正しい座り方となったのは、明治時代に子供達に礼法を教育するようになってからのことだそうです。それ以前の日本人はさまざまな自由な坐り方をしていたというのです。著者は昔の古い絵や図の中からそれらを一つひとつ示してくれます。昔の平安鎌倉の絵巻物や江戸の浮世絵などに、確かに立て膝をしたり、しゃがんだり、かかとに尻を載せたりした人々が描かれています。浮世絵の美人画は足の形があの色気を作り出しているのかもしれません。十二単衣のお姫が、ゆったりとしたきものの内側で、足はどうなっているのか、決して正座ではなさそうです。案外足を思いっきり伸ばしているかもしれません。面白くなったので、美術展の図録など引っ張り出して、立てひざにしてるのやら、足の裏を合わせて座っているのやら眺めては楽しみましたが、昔の人は畳や床の生活で、これは自然と足腰体を鍛えたことと思います。つまり足首や股関節や骨盤が自由でたくましくよく動いたことと思います。

本の帯の写真は幕末のものだそうで、殿様がカゴに乗って出かけるのを、家来たちが外で待っているところです。ヤンキー坐りをしているとはいえ、失礼のない坐り方なのです。たくましい足をしてますね。足の裏はしっかり地べたを踏んでいます。からだが自由に解放されていたということは、もちろん精神ものびのびしてたんじゃないかと想像せられます。今の私たちものびのびと自由にゆったり暮らしたいものです。

田崎 敬子

日本人の坐り方 (集英社新書) [ 矢田部英正 ]

価格:880円
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