マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第28冊目
「かわいい」論 四方田犬彦著 ちくま新書 2008(第1刷2006)
現在「かわいいー」と言う言葉をよく聞きます。子どもでも若者でも大人でも老人でもみな「かわいい」という言葉を口にします。
わたしも「かわいいー」と最近はよく言います。
「おはよう」「ありがとう」より「かわいい」と使ってる頻度は多そうです。
わたしなど昔を思い出しても、今ほど口に出して言わなかったように思います。かわいいものを前にした時は、心の中で思って少し照れて秘めたような気分があって、わざわざ口にまで出しませんでした。
今「かわいい」ものは多種多様になりました。子どもや小さいものだけでなく、最近ではおじいさんやおばあさんに向けても、「かわいい」などと発して、「え?」と驚かされます。
アニメ、プリクラ、キティちゃん、ピカチュウ、オタク、萌え・・これら日本のサブカルチャーと言われるものは今や世界中に広がっています。聞いたことないなんて人いますか?
著者はこれらの生き生きとした「かわいい」現象を、21世紀の美学として位置づけ、「かわいい」って何?と分析していきます。
1001年頃に成った『枕草子』にすでに「かわいいもの」という段があり、そこには「メロンに歯を立てている子供の顔・・」などと今も変わらないまなざしが書かれているとか、秋葉原、池袋、新宿2丁目のいわゆる萌えスポットを歩いて「かわいい」文化の広がりを見つめたり、セーラームーンのことを考えたり、「かわいいと呼べるものをあげてください」「かわいいの反対語は何ですか」と、学生にアンケートをとったりしています。
現在の「かわいい」現象はこの社会に突然現れてきたものではなく、連綿と続いてきた日本の文化史の先端に位置しているものになっています。
普段は気にも止めずに目に映ってたものたちですが、わたしなりの「かわいいもの」「萌えもの」は何かを見つけていくのもまた面白いかなと思いましたね。
田崎 敬子
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