はじめ文庫の本棚から 第12冊目
「日本語練習帳」 大野晋著 岩波新書 1999
著者の大野晋はこの本を出したとき、お年80才でした。
1月20日に第1刷が出版され、3ヶ月後の4月22日には、
第3刷が増刷されたほど人気だった本です。
日本語って、むずかしい。
きっと誰も思っているのだと思います。
あなたは、どう、考えますか?
などという問いが飛んできた日には、
もう消えてしまいたいぐらい。
魔法は使えないから、消える事もできないでその場に目を閉じ、
口を閉じて、順番を待っている間、心臓は飛び出しそうですよね。
というのは、わたしだけか?
これは家系かと思ったら、仕方ないかとあきらめておりますが、
何ごともあきらめてはいけないんですね。
ですが、この本は話せるようになるという本ではありません。
本を、もっと深く読めるようになる、いい文章が書けるようになる、
そのために練習してみましょうというのです。
「思う」と「考える」はどう違うかということから始まり、
わかりやすく、なるほど〜と、いつの間にかあごを振っている自分に気がつきます。
なんでも、面白いなと思った時には、もう入口に立っていますね。
すると立ったところから動く道路になっていて、
歩かなくても自然に覚えていくという事になっています。
ずいぶん楽して日本語を覚えられると、勘違いしてしまいますが、
やはり練習を繰り返して学んでいくことが大事です。
井上ひさしの戯曲に、『父と暮らせば』という、
原爆で死んだ父親が、生き残った一人娘のことが心配で、
何かのたびに出てきては、ふたりで対話するという芝居があります。
ですから広島弁なのですが、この本はフランス語に訳されて、
フランスで上演され、好評を博したそうです。
つまり、広島弁だろうと、標準語だろうと、何をしゃべって、
何を伝えようとしたかということが、人には伝わるんですね。
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