マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第18冊目
茶話 薄田泣菫著 岩波文庫
お茶を飲みながら気楽なおしゃべりをする・・こんなリラックスした楽しい時間はありません。もういいかげん人と集まって、肩や背中を叩き合って、マスクはゴミ箱へ投げて、思いっきり笑いたいものです。そういえばおなかの皮がよじれるほど笑うって、しばらく忘れておりました。友や家族でも、集まって話しているうちに笑いがはじけて、次から次に伝染して、あっちでもこっちでもからだを折り曲げのけぞらせて、苦しそうに笑ってるってことありますよね。そしてみんな痛い痛いとおなかをさすって、久しぶりにこんなに笑った、ああおかしいなんてね。ここまで話が発展しなくても、とにかく人は顔を合わせて、おしゃべりして、笑って、また生き直して暮らしています。
薄田泣菫(すすきだきゅうきん)のこの「茶話」は、そこまで大笑いではありませんが、ホーやらへーやらフフやらクスッやら、感心したり吹き出したりする話でいっぱいです。時は大正5年から大阪毎日新聞に連載された時事話、今からおよそ100年前。今100才の人が子供だった頃の、世間の話、人間の話です。面白い話に古くさい新しいはありません。教科書などで見た歴史上の人物も、時間を超えて、隣の町内に住んでるような気になります。
自分が書いた字が読めないという人いますよね。私のそばにもおりました。そんな話があったりします。あのロシアの文豪トルストイも自分が書いた字が読めないほどの悪筆だったようです。あの長編の原稿を彼の妻がすべて書き直して出版社に渡したそうですよ。またフランスのフィガロ紙に教師募集の広告が載った。これは飼ってるオウムの訛りがひどすぎて、そのオウムに正確なフランス語ができる教師を募集したものだったそうです。国語に敏感なフランスというニュアンスもさりげなく伝えてきます。
ほぼ見開きの2ページで一つの話になっているので、どこから読んでもいいし、ほんの数分あれば一つの茶話が読めます。クスッとなれば、からだにも良い。はじめ文庫でもこれからは茶話をする日というのを始めたいものです。
田崎 敬子
はじめ文庫(マイクロライブラリー)は、毎月第3土曜日曜12:00-18:00 オープンしています。
読書でもおしゃべりでもご自由にお使いください。