マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第21冊目
風の事典 関口武著 原書房 1985
風のなまえ 榎本好宏著 白水社 2012
今日は一日雨降り。午後は雷が鳴り続けました。ずっとゴロゴロかけ巡っておりましたが、最後あたり2回ほどそうとう大きな音で、天地を震わせて荒れ暴れたので、とっさに机の下に隠れようかと身構えたことでした。ちょうどこの『風の事典』を開いていたので、雨、風、雷とうまくつながったものです。そのうち雷も遠くへ去り、あとしばらく強い風が残って、窓辺に雨をたたきつけました。
風の名前は漁業を営む人たち、沿岸航海の船乗りたちの間から発生しました。舟の底板の下は地獄に通じる生業の中で、風を見分けることは命に関わることでした。風の名前の数が多いほど、海の自然は厳しく、人々は風を知り、分けて区別しました。日本には風の名前は2145個あるそうですが、実際にわたしたちが知っている風の名前はずいぶん少なくなりました。北風、南風、東風、南風、嵐、木枯らし・・気象情報で聞く名前くらいです。
平安時代に「春はあけぼの・・」と書いた作者は、「風は嵐。木枯し。三月ばかりの夕暮れに、ゆるく吹きたる花風・・」とも書きました。風は、懐かしさやおもむきやあこがれを吹かせてくれます。風に吹かれて旅を続けるフーテンの寅さん、嵐を呼ぶ男、越中おわら節風の盆・・、せっかくの美しい日本語や自然とともにある優しい豊かな生活を忘れたくないものです。
あとひとつ、日本の風の名前には西日本型、東日本太平洋型、日本海型と3群あるそうです。これは日本の釣り針が丸型、角型、長型の使用地域とほぼ一致しているそうですよ、ちょっと興味の湧くとこです。
『風の事典』は、全国規模の風のカタログ。
『風のなまえ』は、俳句を読まれる方の風の話です。
※こちらの文章は3月13日に書かれたものを記事化しています。
田崎 敬子
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