マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第30冊目
『無縁・公界・楽ー日本中世の自由と平和』 平凡社 1978
『日本中世の民衆像ー平民と職人』 岩波新書 1980
『異形の王権』 平凡社ライブラリー 1993
この雨続きの梅雨の湿気にまとわれて、扇風機をかけたり除湿機をつけたりしていますが、振動音ってけっこううるさいですね。それに扇風機は具合が悪く、首振りのある位置に来るとギーギーきしみ声を上げて、わたしの首の骨が鳴ってるのかと思いました。こんな時は遠い日本の中世に想いを馳せてみようと、本棚から3冊抜き出してきました。
日本の中世といえば平安時代末から戦国時代まで、500年も1000年も昔のことです。浦島太郎だって竜宮から戻ったのは300年後でした。それより長い。それにふだんから興味を持っているとかではないので、公界(くがい)とか異形(いぎょう)とか、漢字も読めないし意味も分かりません。しかしその時代の人々が強くたくましい力をみなぎらせて生きていたに違いないと直感しまして本を開いてみたのです。ひどい飢饉はあり道端には餓死した人があちこちに倒れている、群盗は横行する、社会は不安の絶頂期にありながらも、人々は自由に平和に生き生きと命を爆発させていました。
中世も鎌倉以前というのはどちらかというと古代、原始へ通じていく、ですから江戸以後現代人の私たちの常識では理解しがたい異質なところがあるようですが、そこには貴賎などの差別のない自由で多彩な社会があったのです。
タイトルにある「無縁(むえん)」「公界(くがい)」とは、主従関係親族関係から縁を切って、解放されていると言うことです。その世俗から縁が切れて自由と平和が保証された平和領域を公界と言いました。公界の寺社や市場や町や自治都市はあちこちにあり、キリスト教の宣教師は「敗者も勝者もこの町に来ると敵味方の差別なく皆平和に生活し・・」と書いた手紙を本国に送っているそうです。
絵巻物には、人々の生活ー衣食住・生業・身分・病気などあらゆる場面が描かれて当時の様子を細かく知ることができます。そこに描かれた大人たち子供たちの生き生きとした原始的とも言える強い姿を見ると、見ているだけでも元気になってきます。
老眼鏡をかけさらにルーペをのぞいて隅々まで見つめてしまいますが、着ているものなど見ると今以上にオシャレです。梅雨時のうっとおしいような日には、こんな中世に生きた元気な人々の生活をかいま見て、強くたくましい気を吸い込むのもいいかもしれません
田崎 敬子
※こちらの投稿は7月7日の投稿を記事化したものです。
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