マイクロライブラリー はじめ文庫の本棚から 第33冊目
『風と雲のことば辞典』
倉嶋厚 監修 岡田憲治・原田稔・宇田川眞人 講談社学術文庫 2016
『雨のことば辞典』
倉嶋厚・原田稔 編著 講談社学術文庫 2014
『春雨(はるさめ)じゃ ぬれて行こう』と言ったのはいつの時代の誰だったのか、『しとしとぴっちゃん しとぴっちゃん♫』と歌った子連れ狼の映像ももうずいぶん昔のことで、今では春雨も秋の雨もだいぶ風情のないことになっています。
注意報、警戒警報、記憶にない、かつて経験したことがないなど、雨の情緒どころか不安を募らせる言葉と災害ばかりが年々増え、さらにコロナまで加わって、人の生活はどれだけ脅かされてるでしょう。四季の春夏秋冬さえ最近はなくなってきて、日本が夏と冬だけの国になったらどうしましょうと思います。
日本は雨の多い国です。どのくらい多いって、ロンドンの2倍降ります。また地球の表面に1年に降る雨の2倍の量の雨が、日本には降るのだそうです。雨は災害と恵みとどちらももたらしますが、雨のことばを集める中で、雨の恵みを表す言葉が意外にも多かったと著者は感想を述べています。
春雨は春の下半期(晩春)に降る雨を言い、ひと雨ごとに暖かさを運ぶ雨です。ぬれても冷えないのでしょうか、それより美しい人に傘を差し出して、自分は『ぬれて行こう』と雨の中に出ていく月形半平太のような気取り屋は、今居るんですかね。また雨宿りの、あの軒下で居合わせた知らない人との距離感、緊張感も今ではなくなりましたねー。
雨と一緒に風と雲のことばの本も紹介します。雨のことばは1200語、風は1040語、雲は611語載っています。雨の降るしくみや雲と地球規模の水の大循環や風とは何かなどの記事を読みやすいエッセイにしていて、読んで面白い楽しい本になっています。「ひゅっ」とは風が強く吹く音で、「ひゅうひゅう」とか「びゅうびゅう」とか「ビュー」とか言いますね。
なんと、風速を目測する時の基準を作ったイギリス海軍少佐の名前は、F.ビューフォートさんとおっしゃったそうです。いかにもビュービューしてます。風力を12階級に分けましたが、まん中の6階級は風速12メートルあたりで雄風と呼び、大枝が動く、電線が鳴る、傘が差しにくいと説明しています。
田崎 敬子
はじめ文庫(マイクロライブラリー)は、毎月第3土曜日曜12:00-18:00 オープンしています。
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