「日本の放浪芸」「私のための芸能野史」はじめ文庫の本棚から

マイクロライブラリー はじめ文庫

はじめ文庫の本棚から6冊目
「日本の放浪芸」7枚組LP 小沢昭一取材・構成 ビクター 1971
「私のための芸能野史」 小沢昭一著 ちくま文庫 1973

私がまだ幼かった頃の祭の日には、神社の境内を多くの人が行き交い、人だかりの奥では、笛の音とともに壷からコブラが出てきたり、腹巻のお兄さんが、刀で自分の腕の皮膚を切って、ほれこの通りと、血が幾筋にもにじみ出たところを見せ、ガマの油とやらを塗ってそこをペタペタと叩いている目の前で、傷口があっという間にふさがったのを見たりしました。コブラは何を売っていたのでしょうか、商売にしっかり貢献していました。また家の玄関の前では、托鉢の僧が立ってお経を唱えたり、虚無僧が尺八を吹いたりしました。

1970年頃に上野アメ横で、バナナの叩き売りの口上に聴き惚れ、その後行くたびに探しましたが、もうやっていませんでした。

LPの放浪芸の方は、1970年から71年に収録したものです。この頃これら放浪芸はすでに消滅寸前にあったのです。もし小沢昭一が日本を回って、これらの記録を残さなかったら、日本の放浪芸はまったく風化してしまったことでしょう。遠い昔からつい先頃まで、暮らしとともにあったこれら道や町や空き地の芸能は、日本文化として保存されなかったのですから。

俳優小沢昭一がこの調査に熱情をもって取り組んだのは、まったく個人的な理由でした。40才になり、俳優業を20年続けてきたところでした。その先を続けるに、俳優としての自分に惑い出し、芸能者の原点を確認していく作業が彼にとって最大必要だったのです。とても貴重な収録と著作だと思います。

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