はじめ文庫の本棚から9冊目
「文豪怪談傑作選 柳田國男集 幽冥談」 東雅夫編 ちくま文庫 2007
『高野聖』や『婦系図』など、明治、大正の時代に怪異文学を書いた泉鏡花の作品は、だいたい明治のことばも分からなくて、読み進めないでいたので、その面白さも知らずにいました。最近もっと詳しく知る必要があり、はじめ文庫から、怪異とか、幽霊とか、綺想とかに関連するような本を抜き出してきましたが、その中の1冊が、この柳田國男の幽冥談です。柳田國男の文章は、とてもわかりやすく、人柄に近づけるような感じもあり、とくに文学なのか民俗学なのか、その境界を揺らされる楽しさがあります。
この本を開いてみると、まず、お化けとは化け物の子供語だとあって、とても分かりやすく中に入っていくことができました。それに、泉鏡花とはお化け好きの友達どうしで、「鏡花君の如きも嘘には違いないが、小説的に嘘を嘘として隠さず書いてあるからいい」などと言っていて、なんだか鏡花の作品が読みやすくなったなと安心しました。
すると、本の中にある『遠野物語』の遠かったものが、近くに感じられてきて、まだわたしなどの年代でも、父母や祖父母が話していたことの中に、古くからの人の暮らしのものがたりがあったことなど思い出しました。わたしの郷里の母などは、その町で生まれてずっとそこに暮らし、来年には90年になりますが、中国地方の小さな城下町の、「城下のものがたり」など、もっと聞いておきたいと思ったことでした。
だけど、この本の表紙の、万年筆、ふたの挟むところに丸い粒が付いている万年筆って、どこの製品でしたっけ?
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